祖父の髭剃り

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この土、日は、少しだけ家族サービスができた、というか家族と一緒にい
ることができた。
そして、お金をかけず皆であっち行ったりこっち行ったり楽しむことができ
た。また、ビールを飲んで久しぶりに昼寝などもやってみた。
夕方から唐津の海に行ったり、近くの穴場の遊び場を見つけ夕涼み、DVDを借りて
皆で映画鑑賞会、朝、昼と私の特製料理、公園で夜のジョギング、缶つぶしなど、たい
したことのないイベントでも子供達は喜んでくれた。
最近は月の半分ぐらいは会えない子供達も皆ちゃんと育っている、これ
も、妻のおかげ、義理の母、同居の両親のおかげ、感謝、感謝。

一ヶ月程前、東京の施設に入っている96歳の祖父の所に行った。
去年から事情があってこの施設に入っている。施設の方々も皆良い人たち
で東京に行った時は時間があれば顔を出すようにしている。
私『こんにちは』
祖父『だれだい』
私『隆夫』
祖父『ほほー、隆夫か』
私『元気だった』
祖父『いやね、昨日まで日本中を仕事で回っていて疲れちゃったよ』
私『どこに行ってきたの』
祖父『北海道から九州で、明日飛行機で東京まで帰ろうと思っているんだけ
ど、飛行機の券はどうやって買えばいいかな、忘れちゃったよ』
私『大丈夫だよ、どうにかなるから』

こんな感じで、祖父に合わしながら、現実と違っていても話を進める。
昔の事になると記憶は鮮明になりいくらでも会話はできる。
今の事は、妄想の世界のよう。

私『おじいちゃん、髭がすごくはえているよ』
祖父『あーそうか』
私『剃った方がいいんじゃない』
祖父『明日東京に帰るから剃っておいた方がいいかな』
充電していた電気髭剃りを祖父に渡す。
少し嫌がっていた祖父も髭剃りを手に髭を剃り始めた。
「ジョリジョリジョリ、カリカリ、ジョリ・・・」
なんと髭を剃りだしたとたん祖父は精悍で気持ち良さそうな顔つきに変わり、なんとも機敏に無駄なく髭を剃っている。
96年の人生の内70年以上は髭を剃ってきて、この作業は体が否応無く覚えているのだろう。
髭剃りを始めれば、祖父は私より要領よく髭を剃るのかもしれない。
3分ぐらいして、祖父は顎や頬を念入りに触りながら剃りこぼしが無いかどうか確かめ、『気持ちよかった、ありがとう』と電気髭剃りを私に渡した。
なんと満足そうな顔。
人は好きで年を取っているわけではなく、また、人生の最後を一人で過ごしたいと心から思っている人も少ないと思う。
人生約80年、最後は「この人生、良かったなー、思い残すことはない」と振り返り安心してあの世にいければと思う。
小さいころ世話になった祖父、かわいがってくれた分、世話になった分、少しでも恩返ししたいと思う。
でも、きっと返しきれないのだろう。
だから、その分、自分の子供、孫に、祖父、祖母、父、母からかわいがってもらった分を引き継いでいくのかもしれない、皆。