【3DGS】実写と見紛う空間再現 次世代デジタルツインがビジネスにもたらす価値とは

【3DGS】実写と見紛う空間再現 次世代デジタルツインがビジネスにもたらす価値とは

新設したR&D本部では、革新的なテクノロジーの実践的な検証を進めています。その取り組みの1つとして、3D Gaussian Splatting(3DGS)の技術検証を行いました。本稿では、2025年11〜12月にかけての実践的な検証を通じて見えてきた、機材選択の工夫、撮影時の工夫、そしてビジネス展開の可能性をご紹介いたします。

1. 3D Gaussian Splatting(3DGS)とは

「写真や動画では、現場の空気感まで伝わらない」「かといって、CG制作はコストも時間もかかりすぎる」。そんなビジネスシーンの課題を解決する最新技術が、3D Gaussian Splatting(3DGS)です。

3DGSは、複数の写真から「空間そのもの」をAIが再構築する技術です。従来の3Dモデル(ポリゴン)のような「模型」ではなく、数百万個の「半透明の粒子」で空間を描画することで、光の反射や素材の質感まで、現実世界をそのまま切り取ったような圧倒的な没入感を実現します。

2. 「作る」3Dから「写し取る」3DGSへ

これまで空間のデジタル化といえば、「フォトグラメトリ」による立体再構築や、「360°ビュー」による定点の見回しが一般的でした。しかし、3DGSは、そのどちらとも異なるアプローチで現実を再現します。

リアリティを極めた質感

金属の反射、ガラス越しの光、水面の揺らぎ――従来の3Dでは再現が難しかった現象を、3DGSは自然な"光のにじみ"として映し出します。まるでカメラが世界をそのまま吸い込んだような、驚異的なリアリズムが再現可能です。

複数視点からの補完

360°ビュー(パノラマ写真)は高画質ですが、撮影した地点からの視点に固定されています。一方、3DGSは撮影された複数の写真からその間の視点をAIが補完して生成するため、「撮影していない視点」からも空間を見ることができます。この視点補完の能力により、ビューアの設計次第で、さまざまな鑑賞体験が可能になります。

コストと時間の圧倒的な圧縮

従来の3Dモデリングや高精度なフォトグラメトリは、膨大な計算時間(レンダリング)や専門家による手作業の修正を必要としました。しかし、3DGSは学習と描画のプロセスが極めて効率化されており、数分〜数十分という短時間で高品質な3D空間を生成できます。この「速さ」こそが、制作コストを劇的に下げ、ビジネス現場での実用性を飛躍的に高めています。

従来の3D技術が「形状を再現する」ことに重きを置いていたのに対し、3DGSはその一歩先――"空気感と感動を伝える"ためのテクノロジーへと進化しています。

3. 実践ログ:弊社取り組み紹介

2025年11〜12月にかけて、オフィス、公園、寺院、旅館などで撮影実験を重ね、「どの環境で・どの機材をどう使うとビジネス品質の3DGSになるか」を検証してきました。ここでは、弊社の取り組みと機材の"使いどころ"がわかるポイントだけを抜粋してご紹介します。

小物・素材実験:スマホより「撮り方」と前処理

回転台に置いた小物や椅子などを、スマホ小型アクションカメラで撮影し、3Dモデルの精度と質感を比較しました。

  • 枚数を稼げる小型アクションカメラは、画質スペック以上に「安定したモデル」を作りやすく、小物や椅子のレザー・木目などをしっかり表現できることが分かりました。
  • 一方、スマホは高解像度ながら背景情報が多く、アライメントが不安定になりやすいなど、「カメラ性能に加えて撮り方が重要」という結論に至りました。
  • Photoshopで背景を切り抜き、椅子だけをモデル化する実験では、スタジオがなくても"単体プロダクト用モデル"が作れる手応えも得ています。
椅子のモデル

屋外・室内空間:小型アクションカメラ と PortalCam の役割分担

公園の遊具・木・石、公園〜社内会議室といった屋外・室内を対象に、空間再現と質感再現のバランスを検証しました。

屋外

屋外では、遊具や木を題材に、撮影速度のムラや風・強い日差しがノイズや粗さの原因になることを確認し、「時間帯・天候・移動速度を設計する」ことの重要性を整理しました。

室内空間

  • 小型アクションカメラ:椅子やボトルなど"質感重視の単体物"で真価を発揮
  • PortalCam:オフィスフロアやラウンジなど"広い空間でも破綻のないモデル"にできる強みという役割分担が明確になりました。

実例制作での工夫:「何を見せたいか」が機材選択を決める

ふかほり邸様・妙法寺様での撮影では、「見どころ」に応じた機材選択を行いました。

質感を優先:小型アクションカメラ

妙法寺様の御宝前では、金箔の輝きと色味を最優先に小型アクションカメラで撮影。ふかほり邸様のBarでは、ボトルのラベルと照明のライトアップを集中的に記録し、高級感と雰囲気を再現しました。

空間全体を優先:PortalCam

妙法寺様の大本堂では、広い空間の連続性が重要なため、PortalCamで破綻のない3DGSを生成。ふかほり邸様の離れも、撮影時間の制約下で複数部屋を効率的に撮影するため、PortalCamを採用しました。

機材選択の本質

つまり、スペックではなく「その空間で最も伝えたいことが何か」という問いが、機材選択を決めるのです。細部の感動か、体験全体の連続性か――この優先順位を明確にすることが、ビジネス品質の3DGSを生み出す第一歩だと学びました。

4. 現場で見えた「成功の鍵」:美しく残すためのコツ

公園、オフィス、寺院、高級旅館と、多様な現場で撮影を重ねる中で、「ビジネスで使えるクオリティ」に仕上げるための共通点が見えてきました。

1. 光をコントロールする

照明や日光の明るさがコロコロ変わると、3DGSは情報の整合性が取れず、ノイズや破綻の原因になります。撮影前に照明を固定し、時間帯も含めて「光の状態を安定させる」ことが、透明感のあるモデルへの第一歩です。

2. 動きを安定させる

速さが揃っていない移動や、急な向きの変更は、そのまま「もや」やブレになって現れます。特に PortalCam では、意識してゆっくり・一定速度で歩くことで、ノイズを最小限に抑えた"歩ける空間"を作ることができます。

3. ルートを設計する

ただ一周ぐるりと回るだけでは、AIが「今どこを見ているか」を見失いやすくなります。要所で1回転するなど、位置関係をはっきり伝えるルートを事前に組んでおくことで、精度の高いモデルにつながります。

5. いつでもどこでも3Dを見るために:ビューアと運用の工夫

3DGSモデルを作成した後、「どう見せるか」は、その価値を引き出すための重要な要素です。弊社では現在、グループ会社であるUPHASHとともに専用のWebビューアを開発中であり、その機能と設計思想についてご紹介します。

Webブラウザで気軽に体験:特別なアプリ不要

弊社で開発中のビューアは、URLをシェアするだけで、スマートフォンやPCのWebブラウザから3DGSモデルにアクセスできます。特別なアプリのインストール不要で、訪問者はリンクをクリックするだけで3D空間の体験を始められるため、導入のハードルが極めて低く、リーチできるユーザー層が大幅に広がります。

「自動巡回」を選択した理由:直感的な操作体験を優先

VR空間では、ユーザーが自由に歩き回れる仕様を思い浮かべるかもしれません。しかし、弊社は あえて「自由移動」ではなく「自動巡回」を採用しました。その理由は、ユーザー体験の「直感性」を最優先としたからです。

自由移動は自由度がある一方で、操作方法の学習が必要になり、特にWebブラウザでの利用において、ユーザーが迷ったり、操作に戸惑ったりするリスクが生じます。一方、自動巡回なら、ユーザーはただ「見る」だけで、撮影時に意図した「空間の見どころ」を順序立てて体験できます。まるでガイド役が案内してくれるように、初見のユーザーでも迷わず、空間の全体像と魅力的なポイントを効率的に理解できるのです。

「自動」と「静止」の組み合わせ:深掘りと流覧の両立

自動再生を停止することで、その場所から 自由な角度で観察することが可能になります。気になる箇所をアップで眺めたり、別の視点から改めて眺めたり、訪問者の興味に応じた「さらに深い没入」が実現できます。

この仕様により、「流れるようなガイドツアーの分かりやすさ」と「任意の場所での自由な観察」の両立が実現しました。多くのユーザーにとって、追加学習なく3DGSの価値を体験できる設計です。

6. おわりに:3DGSの可能性について――「空間データ」から「あらゆるデータ」の時代へ

3DGSは単なる「3Dモデリング技術」ではありません。これまで「その場に行かないと味わえない」とされていた空間の体験を、デジタル化し、いつでも、どこからでも、何度でも共有・活用できるテクノロジーです。

同時に、セッション3の実験で見えてきたように、3DGSはオブジェクト(製品、建築部材、美術品など)の撮影にも活用できます。小型アクションカメラでの高精度な撮影により、素材の質感や光の反射を細密に再現することで、「物そのもの」のデジタル化という新しい可能性も開かれています。

短期的:ビジネス現場

短期的には、ビジネス現場での具体的なメリットが生まれています。不動産業界では、物件見学の効率化と遠方からの内覧が可能に。観光業界では、訪問前の期待値を高める「デジタルプレビュー」として機能。飲食・ホテル業界では、SNS映えする空間を紹介でき、予約動機につながります。同時に、ECサイトでの高精度な製品表示や、建築部材・インテリアの質感を正確に伝える営業ツールとしても、その価値が広がりつつあります。

中期的:企業資産

中期的には、空間データとオブジェクトデータが企業資産として認識される転換が起こるでしょう。高額な施工費をかけた建築空間、季節限定の展示会、経営者の思いが込められた店舗――こうした「二度と同じ形では存在しないもの」を3Dで記録することは、企業の歴史やアイデンティティを「デジタル遺産」として保存することでもあります。また、開発した製品・商材や、完成した工芸品・美術品を高品質に記録・アーカイブすることも、企業の知的資産となり得ます。

長期的:フォトリアルな空間

長期的には、メタバースやAR/VRの急速な進化に伴い、「フォトリアルな空間・オブジェクトデータ」の需要は加速します。現在、弊社が実践的に確立しつつある「撮り方」と「運用方法」は、業界全体で最適化されていく過程の一例に過ぎませんが、その過程そのものが貴重です。多くの企業が試行錯誤を重ねる中で、より良い手法やベストプラクティスが徐々に形成されていくはずです。また、空間・オブジェクトデータ自体の価値が認識されるようになれば、データの共有やライセンシングといった新しいビジネスモデルの可能性も広がるかもしれません。

私たちは、このテクノロジーの可能性を信じ、引き続き実践的な検証と改善を重ねていきます。「写す」から「活かす」へ。空間もオブジェクトも、3DGSが切り開く新しい時代のビジネス表現に、ぜひご注目ください。

7. お問い合わせ・ご相談について

お客様の空間のデジタル化についてのご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

こんなご相談をお待ちしています:

  • 自社の店舗・施設をデジタルツイン化したい
  • 不動産物件の見学体験をオンライン化したい
  • 展示会やプロモーション映像での活用を検討している
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弊社R&D本部では、引き続き3DGS技術の研究開発を進めており、パートナー企業様との共同プロジェクトも募集中です。

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この記事の執筆者

3DGS担当
3DGS担当
R&D部門で3DGSを担当しています。AIを使ったマンガや動画作成も技術調査を行っています。

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